5行以内で50のお題 31〜40




31.神さま (98文字)


「神さまなんかいるわけないだろ」
銀の鎖を操り、襲いかかってくる相手を屠って。
「いるんだったら罰してみろよ」
冷たく言い切り、どこまでも苛烈な笑みを天に向ける。
この命が、神の不在を証し立てる何よりの。


「ナイトメア」



32.見捨てられた場所 (100文字)


崩れかけた石の壁。
すえた匂いのする路地裏。
あえて割られたとわかるいくつもの街灯。
それなのに辺りに満ちた奇妙な『活気』が、傍若無人な相棒にとてもよく似合っていて。
彼は呆れたようにその街から目をそらした。


「ナイトメア」



33.砂時計 (95文字)


部屋の主が置き忘れたのか、テーブルの上にぽつんと立つ銀の砂時計。
横向きに倒し、動かなくなった砂にひっそりと笑う。
「時間は止まらない」と知っているからこそ、ためらいなく実行に移せる悲しい遊び。


「曙光の星に願いを寄せて」



34.瓦礫の王国 (14文字)


今でも待っていてくれる場所。


「斜陽のひかり」



35.透明なインク (100文字)


柑橘類の絞り汁を用意し、それを布で濾過する。
細めの筆につけ、さらさらと紙に走らせれば準備完了。
「これはなに?」
不思議そうな少女に笑いかけ、注意しながら火であぶる。

さあ、何が浮かび上がってくるでしょう?


「覇者の王冠」



36.許されない願い事 (80文字)


黒髪をくしゃりと撫でられ、大らかな表情で笑いかけられる。
それが不思議なほど嬉しかった。
「ずっと続けばいい」と思っている自分に気づき、思わず苦笑してしまうほどに。


「曙光の星に願いを寄せて」



37.赤 (99文字)


血の色。
燃え盛る炎の色。
沈んでいく夕日の色。
様々な『赤』を思い浮かべ、「赤は命の色ですよね」と言った僕に、主君は何かを放って「これの色だろ」と言い切った。
投げ渡されたのは、トマトによく似た丸い野菜。


「覇者の王冠」



38.曇った空 (96文字)


晴れている時はゆとりを持って、悪天候なら迅速に。
一時も気を抜かず、空模様を行動に反映させなければならない。
「……あ、曇りの時はどうしよう?」

侍従たる者、常に主の機嫌を読まなければならないのだ。


「覇者の王冠」



39.さよなら (97文字)


「ばいばい」は軽い挨拶。
「またね」は再会の約束。
「じゃあな」は軽さと真情の中間。
「さよなら」は少しだけ重い別れの言葉。

「じゃあさよなら、もう戻って来なくていいぞ」
「予想通りの言葉をありがとうよ」


「ナイトメア」



40.両手を広げて (98文字)

たとえ自分が傷ついても、貴方は最後まで他人を庇うのでしょう。
血まみれになっても、剣を振るえなくなっても、誰かのために戦うのをやめようとはしないのでしょう。
ただ両手を広げて、守ろうとするのでしょう。


「曙光の星に願いを寄せて」







    


inserted by FC2 system