5行以内で50のお題 41〜50




41.最後の言葉 (97文字)


「あ? 遺言? なんでオレがテメェより先に死ななきゃならねーんだよ、ありえねぇ」
「こっちの台詞だ。だいたい、最後の言葉を残す元気があったら道連れを探すだろ、普通」
「普通という言葉に泣いて詫びやがれ」


「ナイトメア」



42.選択 (97文字)


形の良い眉を寄せ、真剣そのものの表情で考え込むと、少年は意を決したように一つ頷いた。
ゆっくりと指を持ち上げ、向かって右手の皿を指し示す。
「オムライスにする」
「お前、実はオムレツも好きなんだな?」


「曙光の星に願いを寄せて」



43.信じさせて (36文字)


どうか信じさせて。
あなたたちが呼んでくれた、この名前だけは真実だったと。


「曙光の星に願いを寄せて」



44.遠い背中 (82文字)


風の中、変わらずに響いていく声がある。
足は止めないまま、ちらりと背後を振り返って。

「何をしてる? 早く来い」
「はい!」

だから僕は追いかける。
立ち止まらないあの背中を。


「覇者の王冠」



45.追い風を待つ (89文字)


出来るだけのことはした。
考えうる限りの策は立てた。
武器も、兵の数も、敵の情報も十分に集めた。
さあ、後はただ追い風を待とうか。

ふいにその言葉を思い出し、僕はそっと笑いをかみ殺した。


「覇者の王冠」



46.紙飛行機 (97文字)


「かみひこうき?」
「はい。こうやって折るとよく飛ぶんですよ」
主君の子供たちに説明してやりながら、空に向かって紙飛行機を飛ばす。
かなり質の悪い紙なのに、どうしてだろう。
それを見て胸が詰まったのは。


「覇者の王冠」



47.永遠 (100文字)

「永遠、って曖昧な言葉だよな。確かめる術がねえし」
「まあな。でも途切れたところで終わりなわけだろう?」
「ああ」
「じゃあ続いているうちは永遠でいいんじゃないか?」
「おっ、いいこと言う! それでいこうぜ!」


「斜陽のひかり」



48.光あれ (74文字)


神は言った。
「光あれ」
そして光があった。

「っていうか暑い、消えろ太陽」
「太陽が消えたらオレらも死ぬがな」
「黙れ、お前も消えろ」
「あ? テメェが消えろ」


「ナイトメア」



49.お別れだ (61文字)


それは避けられないもの。
いつか必ずやって来るもの。
すぐ近くにあると知っていたもの。

「お別れだ」

またどこかで巡り会うために。


「斜陽のひかり」



50.物語の終わり (94文字)


そこで一度言葉を切り、語り手は優雅な仕草で一礼した。
赤い唇がくすりと笑う。

さあ、物語はここでおしまい。
あとはその目でご覧じろ。

彼らの生き様が、退屈な日常を少しでも慰めてくれることを祈って。


「?」







  


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