5行以内で50のお題 1〜10




1.出会い (97文字)


「そういえば、いつ我が君に忠誠を誓ったんでしたっけ?」
優しい魔術師の言葉に、自分が忠誠を誓った経緯を話しかけ。
脳裏を過ぎった『赤』に、思い直して言葉を飲み込んだ。

すべての始まりはあの出会いから。


「覇者の王冠」



2.三日月 (95文字)


「笑ってる猫の口」
「湾曲した短剣」
「南国の果物」
「あー……欠けまくったお前の良心」
「うるさい黙れ死ね」
「よっしゃ、お前の負け……ってテメェ、刃物振り回すんじゃねぇよ!!」

命がけの連想ゲーム。


「ナイトメア」



3.あの日の約束 (71文字)


男は「全部終わったら帰って来い」と言った。
青年は笑って「気が向いたらな」と答えた。
それは嘘よりもずっと優しい、叶うはずがなかったあの日の約束。


「斜陽のひかり」



4.歌声 (97文字)


どこまでも綺麗な歌声が、あるところに差しかかるとぶつりと途切れる。
そして最初からやり直し。
「なあ」
「なんだ?」
「なんでそこで途切れるんだ?」
「…………英語、というのが発音出来ないんだ」

なるほど。


「曙光の星に願いを寄せて」



5.天使 (98文字)


血溜まりの中で髪をかき上げ、美貌の青年はそっけない口調で言う。
「っていうか、おれは戦うのが嫌いなんだよ。面倒くさくて」
「ああそうかよ」
戦いを嫌がってみせる天使の言葉に、相棒はしかめ面で舌打ちした。


「ナイトメア」



6.旅に出よう (67文字)


鞄の代わりに剣を下げ、着替えの変わりに甲冑を着こんで。
さあ、後戻りの出来ない旅に出よう。

旅の終わり? もちろん、滅び去った王朝の上まで。


「覇者の王冠」



7.積み木のお城 (95文字)


耳障りな音を立てて、差し出された膳が引っくり返った。
怯えた顔で身をすくめる女中に、彼は眉をひそめて問いかける。
「なんで早く片づけないの?」
いらなくなったら壊してしまえる、ここは積み木のお城。


「沈黙の王様」



8.愛してました (59文字)


自分たちが滅びを招きよせた世界。
自分たちが捨てていった世界。
結局は自分たちを拒んだ世界。

それでも何より、愛してました。


「覇者の王冠」



9.可愛い犬 (74文字)


それは従順で、可愛らしく、人懐こい。
主が姿を見せると嬉しそうに駆け寄り、尻尾を振って命令されるのを待つ。

「……で、お前とどう違うんだ?」
「えっ!?」


「覇者の王冠」



10.硝子のナイフ (97文字)


鋼よりも鋭く相手を傷つけ、その痛みに耐えられずに砕けてしまう。
「なんかそれってお前みたいだよなー」
「……なにか悪いものでも食べたのか?」
硝子のナイフに似た親友は、稀有な美貌をゆがめてそう呟いた。


「斜陽のひかり」







    


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